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いかに生き、いかに死ぬか・・・映画「明日への遺言」[2008年01月20日(日) ]
 縁あって試写会を見ました。
 名古屋を無差別爆撃して撃墜され、降下した米軍B29搭乗員38人の処刑の責任を問われ、B級戦犯として絞首刑の判決を受けて、昭和24年9月17日、巣鴨の13階段を上った東海軍管区司令官、岡田資・元陸軍中将の、戦犯裁判を闘う「法戦」の話です。

 明日への遺言

 監督小泉堯史、主演藤田まこと。映画の岡田中将に魅せられて、原作の「ながい旅」(大岡昇平著、角川文庫)と「私の中の日本人――岡田資」(大岡昇平全集21 評論[ 筑摩書房)も読みました。映像と、原作とが入り混じってさまざまな思いが今も続いています。

 映画を見ている最中に、30数年前、事に臨んでの心構えー岡田中将の法戦のケースと比べると、重みはまるで違うでしょうがーを、職場の先輩から、かく教えてもらったのを、思い出しました。

 逃げるな、騒ぐな、あわてるな

 映画「明日への遺言」、その原作「ながい旅」で
「国破れて上将が求めて責任を取るのは、当然すぎることではありませんか」とありました。
 すなわち司令官として、米軍B29搭乗員処刑のすべての責任を負う。また処刑をした理由として米軍の無差別爆撃の違法性を訴えてそれを立証する。「ながい旅」にこうあります。

 「スガモ・プリズンはこんな不撓不屈の囚人はみたことがなかった」と。
 
 たった一人の、その法戦の結果、岡田中将は死刑となったが、部下は死刑を免れました。
 上将の中にも責任逃れに汲々とする輩がいるなかで、岡田中将は、法戦を通して人はいかに生き、いかに死ぬか、を突き付けてその答えを、私にとっては明らかにしています。

 映画は、責任の取り方と、法廷での傍聴という場を通して描かれる家族との深い絆、愛を両輪に、戦争裁判が抱える矛盾、責任逃れに汲々とする下劣な精神などが織りなされて、展開しています。
 原作はさらに国のこれからを思う心、宗教の力など、世界を、人生を構成する大小の、いくつもの要素がより深く盛り込まれて、あきることがありません。

 岡田資を書くにあたって大岡昇平はこう書いています。
 「戦後一般の虚脱状態の中で、判断力と気力に衰えを見せず、主張すべき点を堂々と主張したところに、私は日本人を認めたい。少なくとも、そういう日本人のほか私には興味がない」(「私の中の日本人――岡田資」)。

 その「興味ある」日本人、岡田中将は「処刑当日というのに、終日平常と何の変わりもなく、監視兵らと冗談を飛ばしあい」、処刑場へ向かうにいささかも乱れず、部下の一人は「閣下の顔はホンノリ紅らんで、まるで内部から光を発しているようでした。私はも早や元東海軍司令官も岡田資と云う人感ぜず、仏を全身的に感じたのです」(「ながい旅」)。

 若い時から日蓮宗の信者だった岡田中将は時に修羅となって戦い抜き、獄舎では菩薩として部下を導き、最後は仏になった、という証言の一つです。
 享年60歳。仏縁あってか、現在の私の年です。
 映画は3月1日、封切りです。

Posted at 02:15 | 映画 | この記事のURL
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