平泉といえば中尊寺。異存はないですが、以前から気になっていた達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)へ行ってみました。盛岡経由秋田への旅の途中です。
JR東北本線平泉駅から約5キロ。国指定史跡とはいえ、足の便は悪く○秘スポットであります。それでも行きたかった。理由の第一は、お堂が大きな窟に抱き込まれるようにして建てられている懸(かけ)造り、という建築様式だからです。
窟とか洞窟は、大昔は人の住まいとして大切だったでしょうが、今や不気味さのみ。半世紀前、近所の善福寺川の赤土の崖下に大きな穴があり、防空壕とのことでした。ガキ大将がマッチをかざして真っ先に突入し、腰ぎんちゃくのわれわれがおっかなびっくりついていった日が思い出されます。
自然崇拝のひとつ、岩への信仰や建てにくいところに苦労して建てることで宗教性も高まるようで、懸造りは全国にかなりあります。私が行ったことがある懸造りは清水寺本堂、立石寺五大堂、千葉県館山市のがけの中腹にある大福寺(崖の観音)・・・
度重なる火災により現在の達谷窟毘沙門堂は昭和36年の再建で5代目。縁起はしかし古く1200年前の昔「大将軍(坂上田村麿公)は窟に籠る蝦夷を激戦の末打ち破り・・・」そのお礼に国を守る祈願所として坂上田村麿が創建した、とのことです。
勝者の歴史が描かれておりますが、そうではないもう一つの歴史も知るべきでしょう。想いは複雑になりましたがそれがよかったかも。
タクシーで片道1800円。
「景気はどうですか」
「昔はチップもあったし、もてたし・・よかったですよ。今はだめ」
運転手さんはこの道33年。昭和22年の同い年。とても親切でした。20分ほどの待ち時間をおまけしてもらい、帰りは毛越寺で五月晴れの浄土庭園をまばゆく拝観しました。
宗教学者の山折哲雄さんが「西行巡礼」で紹介している鳥取県の三徳山三仏寺の中腹にある投入堂は、「世にも不思議なお堂」で、縄を頼りに「恐怖が全身を押し包む」中で登った、とあります。
魅力の真髄のようなお堂ですが、私、高いところは苦手です。



