紹介したくはない、だけど知ってはほしい。そんなお店に、お客から「お母さん」と親しまれている経営者に、出合いました。先月末の福島、暑い昼下がりのことでした。
手打ち冷やしラーメン(700円)がとてつもなくおいしかった。麺も、汁も。
「70歳までは自分で打ってたの。今は教えた人から一日100食とっているけど同じ作り方だからね」
「県庁の昼休みが短くなって、みんな急ぐの。食事は時間をかけてきちんとしたものをとらないと。化学調味料は一切使ってません」
「こうして毎日働いてお客さんに精一杯おいしいものを出しているのが楽しくて」
福島駅から南へ徒歩約10分。福島稲荷神社の参道で35年間、食堂をひとりできりもりしてきた70歳代の女性店主の輝くばかりの笑顔は、真摯な商い、生き方がそのまま現れてました。
翻ってこれまでの我がちゃらんぽらんわがままジンセイ。「しょうがない」と自己弁護しつつ「定年後でも遅くはない。そこそこきちんと生きて行こうか」。
こころゆく
我にはたらく仕事あれ
それをし遂げて死なむと思ふ
啄木 一握の砂にありました。
そういうわけで我に力を分けてくれた「あいづ食堂」と「お母さん」を、本日ただ今紹介します。
午後一時半ころ、招き猫に招かれて戸を開けると電気が消えています。
「やってますか」
「こっちの座敷が涼しいからいらっしゃい」
声のほうを見ると、昼の混雑が終わり座敷で横になっている様子。でも、やっている
とのことであがりこむと
「暑いから冷やしにする?」
「はい」
「めちゃおいしい」
「そう。よかった。これ、秘密のたれ。ちょっと入れるともっとおいしくなるから」
本当にいっそうこくが出て、お母さんと冒頭のように話がはずんだしだいです。
「フキご飯もあるから」
これも文句なしですよ。お母さん。
文知摺石
この日朝秋田を出発、奥羽本線新庄山形経由、目的地は郡山でしたが、約束までに時間があり福島で降りたのは、文知摺石を見たかったから。
そう言うとお母さんは「いい運転手さんを知っているから」とタクシーの手配をしてくれました。
文知摺石は百人一首のこの歌に詠まれ、芭蕉も子規も訪れて一句詠んだ旧跡です。石はごらんのものでいわれを知らなければわざわざ訪れる人は少ないでしょう。
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆえに みだれそめにし我ならなくに
河原左大臣 源融
歌の意味は正確にはわかりませんが「しのぶ」、とか「みだれ」、とか「誰」「我」の言葉から感じるところあります。
でも境内のカエデの新緑には目を奪われました。それとの組み合わせは、歌心がある方には魅力でしょう。
「秋の紅葉もすばらしいです」とタクシーの女性運転手さん。しばらく待ってもらいましたが否な顔一つしないで最後まで明るく、安全運転でした。こちらも仕事を大切にする、笑顔が輝く女性でありました。
郡山で
大先輩K.K氏を一年ぶりに尋ねました。
「車窓の新緑がきれいでした」と私。
「きみーい 東北は今が1番いい季節だよ。啄木がうたっているでしょ」
「えっ なんて?」
「○○○・・・」
忘れてしまいした。すみません。でも大先輩、比内鶏のコース、大変おいしかったです。ご馳走さまでした。
明日は再び北へ向かい、山寺立石寺です。