しかしそのほとんどが「土台部分まで裸にされた無残な姿を曝している」中で、私たち一行が訪れた円形の劇場のみ保存状態抜群です。
「劇場は、キュノルティオン山の斜面を利用して作られていて、山土に深く埋没したために石材の剥奪から免れた」(※2)からです。
劇場の収容観客数は14000人以上。今も音楽祭に使われるほど音響効果もよく、20世紀最高のソプラノ歌姫といわれたマリア・カラスも一度ならず劇場の底の丸い舞台「オルケストラ」に立ちました。オルケストラはお察しの通り、現在管弦楽の意味で使用されるオーケストラの名称のもととなったとのことです。
30年前にマリア・カラスが亡くなった時、イヴ・サンローランが「神々は退屈し、自身の声を呼び戻したのだ」と語った、とネットにありました。そのサンローランも今月1日、亡くなりました。思い出があります。就職のために買った最初の背広がイヴ・サンローランのブランドでした。ウェストが75センチだったころです。
劇場では、ガイドのK下さんが「せっかくですから真ん中で歌ったらいかがですか」としきりに勧めてくれましたが、皆さんシャイで、歌いませんでした。K下さんは一人、美声を響かせていました。天気が良ければせめて劇場の上まで登ったのでしょうが、雨に負けてそのまま博物館へ向かいました。一人、エンちゃんだけが上まで登っていました。
博物館には古代の医療用具=写真=がありました。
さらに首のない像がたくさん。生きているうちに、下の体の像を選んでおいて、死後その人の頭の像を付けるためだそうです。そうする意味がおおいにあったのでしょう。合理的ではありますね。
氷雨の中を三度バスに乗って向かったのは美しい港町ナフプリオン。
雨も上がった夕方、この土産物店に入るととてもかわいいお嬢さんが英語で話しかけてきました。
「日本人ですか。サスケを見ています」
サスケ???
我が一家は、その時彼女が何の事を話しているのかわかりませんでした。でも大変にこやかに応対してくれたので、気持ちよくお菓子を幾つか買いました。サスケってTBS系の筋肉番付のスペシャル版で放送されているテレビ番組だったのですね。アメリカでも人気、とその後新聞に出ていましたが、ギリシャで話題になるとは思いもよりませんでした。
でも遠いようで近いギリシャを実感したひと時でした。
明日はいよいよスパルタです。そういえば筋肉と大いに関係ありそうですね。
(※1 「世界の大遺跡5 エーゲとギリシャの文明」 三浦一郎編著 講談社1987年)
(※2 「ギリシャ案内記 下」パウサニアス著、馬場恵二訳 岩波文庫訳注127)

























