≪松の古木に絡みついた藤の花の間から美しい藤の精が現れ、
近江八景に事を寄せ、恋する娘の気持ちを踊りに託す。
女方舞踊の代表作の一つ。(歌舞伎サイトより)≫
「

とざいとォ〜ざ〜い、御代は見てのお帰りだ、
ご用とお急ぎのないお人はどうぞ入っておくれやす〜」
藤娘の特徴はまずお馴染みの
「チョンパ」の照明技術から。
緞帳は開けたままで、舞台・客席とも暗転の闇状態…
そこに聞こえる太鼓の音―
ドンドンドンドン…ドンドンドンドン…
「若紫に〜十返りの〜ォ〜 はァなァを現す〜ゥ 松の藤浪〜ィ〜」
と、アカペラ?で1分程の前置き歌が終わると、
チョーン!と柝(キ)が入り舞台が一気に
パッ!
と明るくなります。
漆黒から、目の覚めるような舞台いっぱいの藤の花と派手な衣装の藤娘。
この瞬間のときめきとどよめきが藤娘の定番演出であり、
会場に足を運ばなければ味わえない醍醐味でもあります。
写真はどれもクリック→クリックで最大になります
舞台衣装は三枚重ねでその一枚一枚にずしりと重い藤の刺繍が施され、お引きずりの裾にはそれぞれ綿が詰まっています。そして藤の簪で埋もれた鬘、それだけで何十kgとある上、腕がつるほど重い藤の枝を片手で振り回す…余程しっかりしていないと手元・足元がふら付き、又1舞台で1〜2sは痩せてしまいます
(若い時にも何度か藤娘の本舞台を踏んでいますが、20年振りの今回は大きな年齢の衰えを痛感しました! なお、藤の枝の大きさは、経験と身長とのバランスで、私は玉三郎さん等女形の男性が使う物を持たされましたので余計に重い〜)
ここで少し解説を…
若紫に 十返りの 花を現す 松の藤浪
若紫=藤の花。 十返り…松は100年に1度花を咲かすと言われ、その十返り(10回目)に、その花が実をつけると言われています。つまり十返り(1000年目)に咲いたその花の実が藤であった、という粋な歌詞。正面には大きな松の幹と垂れ下がった藤の花、これは男(松)にしどけなく絡んだ女(藤)を象徴しています。古典芸能は装置・小道具・衣装・総てに意味があります。
人目せき笠 塗笠しゃんと〜ォ 振りかたげたる 一枝は〜ァ
紫深き 水道の水に〜 染め〜ェて 嬉しき由縁のいろ〜
いとしとかいて 藤の花〜 エ〜ェ〜しょんがいな〜ァ
裾も〜ォ ほらほら〜 しどォけなく〜ゥ〜
人目せき笠=人目から逃れるための笠(黒い塗り笠)。「人目を忍んで貴方に会いに来たの。ゆかりの色・紫が分かる?嬉しいわ〜いとしいわ、裾も乱れそうだわ〜」という感じ。 又、「いとしとかいて藤の花」には「い」+「十」+「し」の意味があります、毛筆でひらがなの「い」を縦に十個書いて(下になるに従って少しづつ小さく書いていく)、十個の「い」の字の真ん中を貫くように「し」を入れると…ほら、藤の1枝の出来上がり〜!
このように長唄の歌詞は掛詞や遊びが入った奥深い意味があります。
Yakoさまとてまりさまが撮って下さった分を連結しました、撮り難い中をおおきに〜
客席からの遠くて小さい写真を伸ばしましたのでかなりボケました 男心の憎いのは〜 外の女子(おなご)にィ神かけて〜
あわず1と 三井のかねごとも〜2 堅い誓いの石山に〜3
身は〜空蝉のから崎や4 待つ夜をよそに比良の雪5
解けて〜逢瀬のあた妬ましい ようもの瀬田に〜6 わしゃ乗せられて〜
文も〜 堅田のかたァ便〜り〜7 心〜矢橋の8かこ〜ちごと〜
ここは歌舞伎などで「くどき」を呼ばれる部分で、藤娘の告白です。歌川広重の近江八景の地名(作品名)が全部読み込まれた掛詞になっています。
1粟津の晴嵐
(あわづのせいらん)=「粟津」と「逢わず」
2.三井の晩鐘
(みいのばんしょう)=約束の言葉=鐘ごと
3.石山の秋月
(いしやまのしゅうげつ)=「石山」と「石のように堅い誓い」
4.唐崎の夜雨
(からさきのやう)=「唐崎」と「蝉の抜け殻のような心」
5.比良の暮雪
(ひらのぼせつ)=待っているのに他の女の所へ行き(雪)、
6.瀬田の夕照
(せたのせきしょう)=ようも(よくも)私をいい気に乗せた(せた=舌)
7.堅田の落雁
(かたたのらくがん)=「堅田」と「一方通行の片便り」(雁=手紙)
8.矢橋の帰帆
(やばせのきはん)=矢のように逸っている
「男心って憎らしいわ。他の女には逢わないと固く誓ったのに…。私は今、蝉の抜け殻のようになっているわ。待っている私を知ってか知らずか?誰かさんの帯を解いて雪がとけるような熱い逢瀬をしていると思うと…あァ妬ましい。よくも私をいい気にさせて…騙された私も私だけど…。お手紙にもお返事がないし…。愚痴も言いたくなるわよ〜。」と、情愛や妬みを、近江八景に擬えて美しく表現しています。
松を〜植ようなら 有馬の里へ 植えさんせ〜 いつまでも〜ォ
変わらぬ契り かいどり褄で よれつ〜ゥもつれつ〜ゥ
まだァ寝が足らぬ 宵寝枕の〜 まだ寝が足らぬ
藤に巻かれて〜寝とござる アア何としょうか どうしょう〜かいな〜ァ
わしが 小枕 お手ェ枕〜ァ〜 …ゴーン!(お寺の鐘)…
空も 霞の夕照りに 名残り惜しみて 帰る雁金〜ェェ チョーン!(幕)
ここは「踊り地」と呼ばれ、三味の音に合わせてリズミカルに踊ります。
松は変わらない契りの象徴。着物の褄(裾)を持ち上げて少し大胆な気分になります。「今頃貴方はどなたとよれたりもつれたりしているの…それを思うと眠れない、睡眠不足だわ…いっそ、藤のように松に絡み付いて寝たいわ…この熱さ、どうすればいいのよ〜、自分の手枕で寝るなんてイヤだわ〜」
そんな事を思いながら踊りで発散していると…ゴ〜ン!と鐘の音が聞こえます。ハッ!と我に返った藤娘は、枝を担いで藤の花の中に帰って行きます。ー幕ー
お粗末でした!お帰りはこちら〜

お越し下さったお友達(残念ながら京都と金沢から来て下さったシニアコムのお方が写っていません

)、&、彼女達が楽屋前ロビーで撮って下さった写真です。又前に書きましたように、鬼籍のブログお仲間や父の気配も感じながら…。
此岸・彼岸の皆々様に感謝です、おおきに〜ありがとさんでございます
