「そうよね。これだけしっかりした体格で、おチンチンもあって、やんちゃなところを見ても、オスよね。手足も大きい!」
久子がはしゃいで声を高くした。
「よし、決定! では命名します。このチビの名はボスとします」
競技会の選手宣誓よろしく右手を前方に挙げ、修が声高らかに仔犬の名を宣言した。
「え? ボスって名前にするの?」
「そうだよ、強そうで、男らしそうだろ? 留守番もできるボス……」
「だって……ボスって……あの、私の実家に昔、いたの同じ名前の犬が。でも、お人好しで、番犬としては役立たず。芸を仕込んでも、ちっとも憶えない、何もできない犬だったのよ」
久子が抗議した。
雑種で気のいい性格だったが、自分でも犬なのか、人間に可愛がられれている別の動物なのか理解してない犬だった。玄関でも、庭の廊下からでもお構いなしに平気で座敷には上がる、欲しいものがあれば口にくわえてどこかへ運び出す。そのくせ、不審者には吠えかからないという犬だった。
「それで、結構。犬でも人間でも、人が良すぎるくらいが、いちばん良いのです。目から鼻に抜けるような、頭のいい奴は人間味に欠ける。バカで結構、な、ボス?」
ボスと名付けた仔犬に同意を求めた。
ボスがまた身体を震わせ、向けられた好意に反応した。
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