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「仕手相場」(パンローリング社&徳間書店)
が代表作の経済作家でした。
偏った作品から脱皮してみたい。
新しい何かを掴みたいと、このコーナーで試させていただきます。
               こずかた治

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街ゆかば  十[2008年08月12日(火) ]

「そうかい、まだ名無しの権兵さん……いやゴン子さんかもな。それなら、なおのこと餌を持ってゆきなよ。儂らの食い残しじゃない、池袋のデパートから仔犬用ってのを買ってきた缶詰だよ」
 どうやら、一座の中心人物か、それに近い存在のようだった。入れ墨と人相だけなら、怖そうなのだが見かけに寄らぬ好人物だった。そう言ってるうちに、後ろからペットフードの缶詰が手渡された。三缶あった。ひとつだけ蓋が開き、割り箸と半分ほどの中身が覗いていた。
「はい、あのう、ほんとうに有り難うございます。どうも申し訳ありません、それでは遠慮なく頂戴いたします」
 なぜ? なぜ、こんなことになってしまったの?。修さん、なんて言うかしら。まさか、この人たちに返してこい……、なんて言わないわね、きっと。いい! 反対してもいいわ。だって、たったひとりで留守番してるのって不用心なんだから。やっぱり飼うことに決める!。
 初めて仔犬と顔を会わせる修の顔を想像しながら、久子は飼おうと決めていた。
 銀杏の古木が敷き詰めたオレンジイエローの葉が大地に敷き詰めた絨毯のように柔らかく気持ちよかった。仔犬に頬刷りしながら久子は、絶対飼う! そう決心していた。
 修と久子の動物たちとの最初の出会いだった。

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