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「仕手相場」(パンローリング社&徳間書店)
が代表作の経済作家でした。
偏った作品から脱皮してみたい。
新しい何かを掴みたいと、このコーナーで試させていただきます。
               こずかた治

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街ゆかば    A [2008年07月24日(木) ]
 少し離れるが、火盗改役の長谷川平三こと鬼兵さんがススキの穂で作ったミミズク人形を境内で買ったかどうか知らないが、子育ての神、鬼子母神は豊島区であり、目白より池袋駅に近い。都内唯一の路面電車、荒川線は始発駅早稲田大学から、川と呼ぶには躊躇いを覚えるほど汚れ濁って淀んでいる神田川を渡る面影橋を経、焼鳥屋などが立ち並ぶ鬼子母神前駅を通過し、通称お婆ちゃん達の原宿、とげ抜き地蔵も過ぎ、終点三ノ輪橋までのんびり、ごとごと走っている。
 この線は、かつての私鉄王子電鉄で、沿線の住人たちは王電と親しみをこめて呼んでいる。お婆ちゃんたちに人気の街巣鴨のとげ抜き地蔵尊通りは大塚駅に近い。近くには都内一旨いと評判の握り飯屋もある。ここの米が旨いのは、研ぎ方ではなく、秘密は米にあるらしい。
 この近辺は、都営では最大といわれる豊島区の雑司ヶ谷霊園があるくらいだから、静かさという点では都内二十三区内ではないと錯覚するほどだ。霊園の下に当たる日本女子大学の裏通りは山窩族研究家であり、彼らの生態を描いた小説「山窩血笑記」などで独特な世界を書き上げた小説家でもあった三角寛の名前を冠し、三角通りと呼ばれているが名前の由来を知っている人もいなくなり、三角さんの名前どころか作品名も忘れ去られている。
 近所の護国寺あたりには「雁の寺」や「五番町夕霧楼」などで著名な直木賞作家、水上勉が住んでいたりという戦前戦後の文士村でもあった。
 だが、いまでは売れない小説家が住めるようなところではなく、売れっ子芸能人か昔からの財界人でなければ、居を構えることなど不可能なほど地価の高い住宅街になってしまった。
 武蔵野の面影などしのぶ由もないが、それでもまあまあ枝のある樹木があちこちにあり、環境はけっして悪くなないのだが、交通の便はお世辞にもいいとは言えなかった。

Posted at 14:37 | 新連載小説 | この記事のURL
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