「ね、どっちだと思う? あなた男でしょ。犬のオス、メスぐらい分かるでしょ」
え? と修が怪訝な顔をした。
男だから犬の雌雄を判別できるはずだという理論に戸惑っていた。重い物を運んだり、棚を吊ったりという力のいる作業なら、女性より男の方がこなせるというのなら理解できた。もっとも、修は棚を作っても、モノは置くな。壊れるからという棚しか作れなかったから、其れについては男の条件に該当しなかった。しかし、久子には自分ができないことは夫のできること。女に分からないことは男が知っていることなのだった。
「うぅん、どれ、お前は男か、それとも女の子か」
修は仔犬の背中に掌を当て、ぐいと仰向けにさせ、しかつめらしく下腹部をのぞき込んだ。観念したのか修の強引さに諦めたのか、仔犬はなされるままにお腹を見せた。
「これは……う〜ん。オ、ト、コの子だと思うけどなぁ。ほら、これは、おチンチンだろ? 違うか? へそ……? じゃない、よ、な」
自信なさそうに、言葉を一言づつ区切って言った。
「どれどれ、わたしにも見せて」
久子も立ち上がり、修の傍らに並んで仰向けにされた仔犬のお腹を覗いた。
尻尾よりか細く頼りない数本の毛の束のようなものが、下腹部の辺りから立ち上っている。指で触ると、芯のような固さの手応えもある。
「これは、男の子だ。ほら、触ってごらん、ね? おチンチンだろ?」
修が手を離し、久子に同意を求めた。
「でも、小さすぎない?」
「小さい?」
「うん」
「何に比べて、小さいんだ?」
修がいたずらそうな目で、久子の顔をのぞき込んだ。
「なにって? ……バカね……!」
「人間、それも、俺のと比較しないでくれよ。人間の雄の中でも、俺は大きい方なんだから」「あら、そうだったの。知らなかったわ、他の人を知っておけばよかった」
すかさず、久子が茶化した。
「他は知らなくていい! 本人が言うのだから、間違いない」
まじめな顔で修が抗議した。
「エッチねえ。でも、ほんとに間違いない? 大丈夫? 後で違ったなんて訂正しないでね」
「だって、ほら、これ、おチンチンだろ? そうだ、もう、何度かおシッコしただろ」
「おシッコ? うん、したわ」
「どうだった。しゃがんでした? それとも、片足上げたか」
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at 19:30
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