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ただ一度の過ちpart4 [2008年01月04日(金) ]
皇居の森の梢は茜色、手前に来るにしたがって濃い青に変ってくるそのグラデ―ションが美しかった。
和田倉噴水公園はその中心に大きな噴水があって 皇太子殿下御成婚記念碑があり それを囲んで植え込みとベンチが点在していた。
夕暮れ時のこの公園はアベックのデート場所になっている。
<いいの?こんな時間に出てきて>
「かまわないわよ」
<だってご主人 もう帰ってくる時間じゃないの?>
「帰って来やしないわよ どうせ女のところでしょ!もうずーッと顔も見たことないわよ」
<夕飯のしたくは?>
「母がやってくれるわよ」
もっとも5時頃には店に来ていたようだからまあそんなものかとくすやんは思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
水銀灯が瞬きしながら点灯し始めた。
くすやんはあのことをいつ口に出すかきっかけが掴めずもじもじしている。
「ねえ くすやん 貴方 私のことどう思ってるの?」
<うん・・・・・・・>
「私ひとりの思い込み?」
・・・・・・・・・・・
<ねえ来週土曜日京都行こうか>
「え?」
<京都だよ チョッと仕事で行く用事があってさ>
「本当?! 一緒に行っていいの?」
<うん午前中 挨拶に寄らなきゃいけないところがあるから 昼頃どこかで待ち合わせて・・>
「うわぁ〜 う・れ・し・い! 何時に何処へ行けばいいの?京都ならわたし案内するわ」
<烏丸口出た左側に大きな郵便局あるでしょ あのあたりに1時ころで>
「うん 分かったわ わあ〜 嬉しいな〜!今度の土曜日はえ〜と21日ね。あら弘法さんの日だわ」
<なに?弘法さんの日って>
「東寺で毎月21日に境内に骨とう品の市が立つのよ 弘法市って云ってるけど陶器とか美術品とか古い衣類とか 掘り出し物が結構あるわよ」
<ふ〜ん>
「ホテルはわたしが手配するわ 株主優待券がたくさんあるから」


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ただ一度の過ちpart5 [2008年01月06日(日) ]
「奥さん以外は私だけにしてね」
ホテルでママはくすやんにこう云っている。
この言葉はくすやんにとってある種の安堵感をもたらした。
こちらの家の垣根を越えないという暗黙の了解と解釈したからだった。

次の年の春のこと 
<あさってから二泊で家族で京都に行ってくるから・・東京留守にするから>
「あら いいわね 円山公園のしだれさくら綺麗よ あたしも行きたいわ〜」
<お土産何がいい>
「そうね 龍村の両面鏡がいいわ 西陣織の化粧がしてあるやつ 古くなっちゃたから」

そしてくすやんの家族の旅行が終わって週が開けたある日 くすやんが家に帰ると奥さんが

*あなた 今日変な女の人から電話があったわよ*
ドッキン!
<で・なんだって?>
*先週の土曜から家族で京都に行きましたか だって。 どなたですか?っていったら電話切っちゃったけど。 何で私達が京都に行ったこと知ってるのかしらね。あなた会社で誰かに云ったの?*
<う・うん 皆知ってるけど・・・>
( くすやんはママ以外には京都行きのこと誰にも云っていない )
こんなルール違反は許せない これじゃこっちがぶっ壊れてしまう。

数日後 一人で残業しているとママから電話。
「もしもし くすやん? あなた本当に家族と京都に行ったの?」
<当たり前じゃないかそう行っただろ! あんた僕の家に電話しなかったか?!>
「したわよ あなた家族と京都に行くなんていって 他の女といったんでしょ!・・・・・・ねえ私達もう終わりね!」
<終わりだ(怒)!!>
「そう わかったわ」ガチャン!

それから1カ月程経つころから くすやんの家に無言電話が。
土日は日中 平日は真夜中に プルルル・・・・・<もしもし ○○ですが>
ツーー ツーー・・・
この繰り返し。これが半年にわたって続いたのであった。
最後の方になると くすやんが受話器を取ると「バカヤロー!」
奥さんが出ると「あなたの旦那 今新宿○○ホテルで女と一緒よ」
当時高校生だった娘さんが電話に出ると「あなたのお父さんは今新宿の○○ホテルの1136号室に女と一緒にいるわよ」
たまたまこのときはくすやん自宅にいたから事なきを得ているが もう我慢の限界。
これはもう決着をつけなくては駄目だと決断して くすやんは 肉を切らせて骨を絶つ 戦法に出たのであった。
さて その戦法とは??
以来 電話はピタリと止まったのであった。

くすやんは今でも苦い思い出として私にこう語るのである
<嫉妬に狂う女は手が付けられない 理屈も常識も一切通用しない非論理の世界に落ちてしまう。 だから迂闊に女性に近づいてはいけない。普段の言動ではそういう性格かどうかの見分けは不可能に近い> と。

それからのくすやんはまたもとの仕事一本 女性の影無しのくすやん に戻ったのであった。

 あとがき この事件では幸いなことにくすやんの家庭は壊されることはなかった。
くすやんの長年にわたる真面目さに対する信頼感なのか 奥さんが出来た人で家族の崩壊を食い止めたのか それは定かでない。


                    完

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絵も花も歌も無い居酒屋で♪ [2008年01月23日(水) ]
「先週取材で湯島天神に行って来ました」
<まだ梅は早いだろ なに撮ってきたの?>
「ええ神田・湯島界隈ということで 社とか境内とか・・・」
<湯島聖堂、神田明神、あたりとセットか?>
「まあそんなところです」
<湯島天神といえば・・あの辺昔高級連れ込みが一杯あったよなあ>
「今でもあります 凄くご立派なラブホテルが軒並みです」
 『あら や〜ね にしやんもまつやんも古いわねェ。今はラブホテルなんていわないのよ ファッションホテルっていうのよ』
<へえ〜〜ママ詳しいじゃないか さてはしょっちゅう行ってるな>
『私は行ったこと無いわよ お客さんの話よ でも中はどうなってるのかしらね 興味あるわ〜〜にしやん知ってるんでしょ?』
<うん 昔よく行ったよ。仕事でね。何しろうちはボイラー屋だからね。ああいうところは大のお得意様でさ。修理に随分行ったなあ>
 『まあ!にしやん仕事で〜〜?本当かなぁ ああいうところはホテルの人と顔あわせなくて済むんでしょ?』
<そりゃそうだよ なあ?>
「ええ 僕も友達に聞いた話しですけど 料金は支払いの為のこんな小さな窓があるんです」
『またまた〜!まつやんもトボケちゃって 友達だなんて・・二人とも当てにならないなぁ』
<今は自動料金支払機になっているところもあるらしいよ。部屋に入ったらドアが電子錠でロックされて帰りにATMみたいな支払機に入金するとドアロックが解除される・・・・仕事で行った部下に聞いた話だけど>
『わあ面白そう! で中はどうなってるの?ベッドが回るとか聞いたけど・・』
「回転ベッドは禁止になりました。その代わり中央部が上下するのです・・友達に聞いた話しですけど・・」
<カラオケも出来るところあるよな。俺が仕事で行っていた頃はまだレーザーディスクだったけど>
「今はカラオケボックスと同じです。友達に聞いた話しですけど」
『行ってみたいなあ!社会科見学で。 お春ちゃんと4人で行きましょうよ。ねえお春ちゃん!見学するだけ どお?』
《行ってみた〜〜い!》
<4人でか〜? 大勢は駄目なんじゃないか? なあ?>
「4人でもOKなところもあります 友達の話によれば」
<フフフフ 友達によればか・・・・それは知らなかったな>
『まつやん じゃ探しておいてね お友達に聞けば分かるでしょ?』
「・・・・・・・・・・・・・・}
<あれ!こんな時間か そろそろ引き上げるか?>
「ハイ」
<じゃあ またネ バイバイ>
『え〜〜 アラもう一歩というところだったのに! お帰りなの〜?』
『・・・・ありがとうございました 又お待ちしておりま〜す』

絵も無い、花も無い、歌も無い交わす言葉も洒落も無いこの居酒屋で健全な大人の会話でした。



 


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