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弔 とむらい [2007年01月28日(日) ]
晴れた冬の空に
一片の雲もないとき
母は逝ったという

火葬場は
焼くためだけにある
煙突の上を
烏が飛んで
煙を乱しても
係りの人は
「いい天気だね」と呟く

生身が焼かれ
出てきたときは骨だけ
何故かとても悔しく
号泣した

天国にも地獄にも行かない

積み重ねた年輪分だけ
細胞が生成を繰り返し
骨にへばりついてきた肉が
猛烈な熱で吹き飛ばされた
それが
とても理不尽だった

特に弔いの心があったわけではない

アルツハイマー病で
表情が無くなり
筋力が無くなり
84才で心不全で
死ぬべくして逝った

すべてが淡々としていた

五才から継母だった人
戦前戦後と辛酸を舐め
栄養失調になりながら
肺結核に罹りながらも
三人の子を慈しみ育て
父亡き後
ひとり暮らしで
やっと平穏を得て
大正琴を習い始め
三輪自転車を乗り回し
パンを焼き
時折訪れると
嬉しそうに
ふざけた振りをして
チャールストンを踊り出した
起伏も淡々としていた

喪服の集団が
三々五々
焼却炉から立ちのぼる
一条の煙をみつめながら
小声の語らいを交わし
精進料理をつついては
近況を久しぶりに問う

生きてきた凸凹が
何故こうも平らになるんだろう
葬儀という一連のセレモニイは
きっとその為にある
弔いが凸凹していたら
参列者はいたたまれない
厳かな決まり事が
ひとつひとつ
生きていた者を亡き人にしていく
生きてきたことを歴史にしていく

これから泣くにしても
個々それぞれの想いで
嘘のない涙が出せる
だから弔いは淡々としている

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