ボールデラド・ホテルで新作小説「高速自動車」を書き終えたポール・シェルダン(あるベストセラー作家の名をもじったものであることは見え見え−訳者矢野浩三郎あとがきより)は酒の勢いで「『大いなる冒険の旅』−小説の世界を脱して、再び現実とのふれあいを取り戻す格段の方途だ…」と思い立ち、カマロを駆って西へ向かった。幾百万人に熱狂を与えた『ミザリー』のミザリーを殺し、「『やった!自由だ!やっと自由になったぞ!あの女めとうとう死んじまった!』と絶叫したものである。」と、感慨をもって。
巨大な悪天候での孤独な致命的事故。
気がつくとポールは『ミザリー』のナンバーワン愛読者、精神が極度に病んでいるとしか言いようのないアニー・ウィルクスに捕獲されていた。下半身はズタズタで。
(訳者あとがきより)1986年9月、ヴァージニア・ビーチで行われた講演でのキングの言。
「1979年、ニューヨークのロックフェラー・プラザでの出来事。NBCのビルを出ると、キングの『ナンバーワンのファン』だと自称する男が、一緒に写真に写って欲しいと、しつこく頼む。キングが『じゃあ、急いで』と、承知すると、男は近くにいる者にポラロイド・カメラを渡し、キングと並んで写真におさまった。さらに男は、出来上がったポラロイド写真にサインをしてくれ、とせがむ。キングは男の差し出す特殊ペンを受け取り、男の名を訊いて、『マーク・チャップマンへ、スティーブン・キングより』とサインしてやった。このマーク・チャップマンこそ、その翌年、同じように写真をとったあと、ジョン・レノンを射殺する『ナンバーワンのファン』である。」
一瞬恐怖におののくキングの顔が見えそうだ。ミザリーからの脱出、動機はこれで十分、十分の迫真小説だ。
Posted
at 20:26
| 読後感想
| この記事のURL
コメント(0)
| トラックバック(0)




