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「鋼材屋にて」[2008年04月19日(土) ]
始めまして、こんにちは。
それでは、絵画・写真で綴る昭和叙事詩
「鋼材屋にて」を始めます。

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「おーい、もたもたすんなあ、早く積み込んじまえー」
社長の声に、良男は額の汗をぬぐった。
今日は土曜日。早目に工場を閉め、社長が皆を東京タワーに連れていってくれる。
良男は2度目、後輩の16歳になったばかりの茂にとっては始めての観光だ。
寮の窓から毎日東京タワーを見ていた茂は、朝からそわそわしている。
「おまえなあ、ロープ緩んでるぞ、銅はけっこう重いんで締め直せよお」良男は荷台の横でロープを握っている茂に叫んだ。それには応えず茂はいう
「あにきよー、俺毎日東京タワー見ていてすごい不思議だなあって思ったんだあ」
「何だよすごいって」
「あのさ、東京タワーって一応建物だべ。そんなのに、中身が何にも無くてアミアミじゃない。なんだかなって、あれ結局。」
「あれな、本名は電波塔っていうんだ。うちの工場のてっぺんにもあるだろ。テレビのアンテナ。あれのでっかい親分みたいなもんだぞ」
「うっひゃー、そしたらあそこの展望台の中に、ここのテレビの百倍位でっかいテレビがあるのかあ。」
「ちがうって、お前バカだなあ。あそっから、ここにテレビが届くのよ。だからあそこにはテレビはないぞお。」
「なんでよ、あにき。なんであそこにテレビが無いのに、ここにテレビが届くのよお。」
「茂、おまえよ、さっぱり何にもわかって無くて説明できねえよ」
ドアの音がして、社長の奥さんが事務所から出て来る。
それを見て、良男は荷台から降り、茂の玉がけを手伝った。
「はい、はい。アイス溶けないうちにちょっと休憩しな。」
そばに来た奥さんが、アルミニュウムのお盆に乗った、ミルクの匂いのするアイスを茂の前に差し出した。
もたついている茂より先に良男が手を出し、2本掴んで荷台に上る。
「ずるいべ。あにきー」と茂も残りの2本を掴んで荷台に上る。
「あらら、社長の分があ」と奥さんの声も聞かず、二人は兄弟のように荷台の上でじゃれあっていた。

いつの間にか、影が少し長くなっていて、奥の方からかすれた社長の声もした。
「おーい、積み込んだかあ、伝票書いたら,すぐ出るぞお」
まだ社長に、アイスキャンディは届いていない。


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文章は、私の夢想です。
この作品のサイズは約53×46cmキャンバスに油彩
作品裏に昭和39年3月と作者サインがあります。
空の青緑色の鮮烈さと、舗道に照り返す春の日差しが見事なバランスを保ち、作品をとても力強くしています。これは、左の三階立て建物の右壁にあたる日差の矩形が、画面の上と下を繋ぐ大切な役目をしているからと考えますが、とにかく画面全体が輝いて、当時の元気さが見る人に伝わります。
また、三輪のトラックが画面の左右にあり、いずれも荷が載っています。そして、表にいる人物は今まさに中に入り込もうとして、駆け足の形に描かれています。トラックの荷台にいる人物はしっかりと鋼材を持ち上げています。
活気あふれるこの油絵は2001年1月、東京日野市で催される高幡不動の骨董市で買い求めた作品です。もう1点を追加し、計3万円弱を支払った記憶があります。
予想以上に高額な気持ちがし、以来私は価格の安さを期待し、古物免許を申請し、仕事の合間をぬって自ら業者市に出かけるようになりました。
うまいへた、無名でも関係なしに心に残る作品を集めようとした、最初の一点です。当時元気だった高幡不動骨董市の会主、Kさんは故人になってしまい、私も白髪が目立ち始めました。個人的には色んな思い出が詰まっている一品ですが、作品からは、今も当時と同じ、ただ明るく正しい輝きが放たれています。


拙い記事におつきあいいただきありがとうございました。
次回は4月23日人物画油絵「私の名前はマリー」を掲載します。


※使用している映像、画像のオリジナルは全て当方が所有しています。
しかし、これらには出処不明のものが少なからずあります。
著作・肖像権の消滅していると思われるものを使用しますが、
もし著作者ご本人で、掲載に異議のある方は、
私のサイトhttp://www31.ocn.ne.jp/~tokyusha/ から
ご連絡ください。
画像削除等、誠意をもって対応させていただきます。

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