この文章は患者の会の会報用に書いたものです。
病人の気持ちを少しでも知ってもらえれば。
= = = = = = = = = = = =
この室(手術室)は何度入っても好きになれない。もちろん自分で入って来たのではなく、ストレッチャーで運ばれて。
手術台の上、まさに「俎上の鯉」。もうなんとでもしてくれ。
(もっとも、世の中の大部分の人はこんな室に入ることはないだろうし、あっても1,2回くらいのもんだろうな。それからするとこれはいい経験だと思うことにしよう。)
女医さんがまわりでなにやらいろいろと手術準備の処置をしている。
モニター類、電子機器類、チューブ類、その他いろんな器具、びん、医療器具が入ったケースが並んでいる。仰向けになっているので床は見ることはできない。
主治医の先生が室に入ってきた。
「うら茄子サン、どう、元気ですか。」
(何言ってんの。こんな所で鯉になっているのに、元気なわけない。
そう言えば昔はうら茄子クンだったな。いつのまにか サン になった。お互いに年をとったもんだ。)
麻酔の先生が左手首を見て「おや、これは?」と主治医に問いかけると「ああ、この人はベテランでねェ。」
(そう、VHL患者はみんな手術のベテランなんだよ。ベテランか、こんなことでベテランになんかなりたくないな。
そうそう、この言葉、Joyceさんも使っているよな。)
しばらくゴチャゴチャとやっているうちに「麻酔の薬がはいりますよー。」という声とともに左腕がピリピリする、血管に沿って。(あ、きたな)と思う間もなくテレビのスイッチを切るようにスッと視界が暗くなり、意識が消える。
麻酔薬の効目は絶大で、ということは、体にとってはかなりの負担になるんだろう。
眠っている間は患者本人は何とも無い。何もわからないが、待機している家族は大変だ。無事に終わることを願って何時間もただひたすら待つだけ。そして手術室の先生方も、朝から晩まで、苦闘してくれる。(何とありがたい事です。)
家族の一人から聞いた話によると、交代で昼食に行った時、執刀の先生が手術着のままごはんを食べていたそうな。
(そりゃそうだ、飲まず食わずというわけにはいかないんだから。たいへんだな、ありがたいな。 (いつも8時間くらいかかる。))
手術室に入るときはまた着替えたと思いますよ。
「うら茄子さーん、終わりましたよー、わかるー、手を握ってー。」
集中治療室に移されているらしい。この瞬間は先生にとっても、家族にとっても緊張の極だろう。
はたして答えが返ってくるか?!
(大丈夫ですヨ、生きていますヨ。)
ア~~~と声らしきものをだしながら、手を握り返す。
一件落着。
さて、ここからの一晩が・・・地獄だゾーーー
= = = = = = = = = = = =
集中治療室は自分も含め 皆 生きるか死ぬか だからねー。