ペットショップの店先に、
はいました。
ずいぶん大きくなってケージに入らなくなったのか、粗末な縄にくくられて犬小屋の前にうずくまっていました。
やせこけたゴールデンレトリーバ。ひょろ長い手足と貧相なボディ。
私の顔を見ると、しっぽを振って近づいてきます。ちょっと頭をなでてやると、人恋しかったのでしょうか、鼻先をこすりつけ、身体を摺り寄せてきました。
『いくらなんでも、大きすぎるなー
…』
その日は、そのまま帰りました。
翌日、どうにも気になって、もう一度ショップへ行きました。
犬はいません。
店員さんに聞くと、
「ああ、あれね…。どうしようかと思ってたんですよ」
裏口へ導かれました。犬は暗い倉庫の片隅につながれていました。
私を覚えていたのか、跳ね起きて、紐がちぎれそうなほど伸びあがってきます。
「これ、欲しいんだけど…」
思わず口にしてしまいました。
「え、ほんとに…よかったなぁお前、命拾いしたぞ」
(えっ
どういう意味
)
ショップでも持て余していたのか、かなり値引いて売ってくれました。
こうして我が家の一員になったゴールデンレトリーバ。名前は「ローズ」
。
その頃、プロ野球で首位打者になった選手の名前を取ってつけました。
ローズはすくすくと育っていきました。
ガリガリだったボディに肉がつき、全身に黄金色の毛がフサフサと波打ちました。おとなしくて賢くて優しい犬でした。
庭先で草抜きをしていると、傍らにちょこんと座って見ています。ゴムボールを投げると、駈け出して取ってきます。つぶらな瞳で私を見上げ、小首をかしげておねだりをする、どうしてこんなに愛らしいのか、抱きしめるとあたたかな体温が伝わってきて、涙がこぼれそうになります。
黄金色の毛を波打たせ、庭先を嬉しそうに疾走するローズは、陽光の下にキラキラと輝く、美しい生き物のようです。
「きれいだねローズ。まるで…スーパーモデルみたいだよ」
淋しかった私の、唯一の、ともだち。
春でした。
白いユキヤナギと黄色いレンギョウが今を盛りと咲き誇り、桜が満開を告げる4月。一年中で、いちばん美しい日曜日でした。
草抜きのあと、少しまどろんで、ソファに横になっていた私は、ふと目が覚めて庭を見ました。どこかで犬の吠え声を聞いた気がしました。
ローズが、いない…?
怖がりで、車が嫌いだったローズが、この頃やけに外へ出たがっていた…。
庭へ出て、あたりを見渡しました。空は真っ青で、どこからか桜の花びらが飛んできます。近くの公園はお花見の客でにぎわっていて、歓声が風に乗って飛んできます。すぐ下の県道は、花見行き来の車で、ふだんより混雑していました。
じっとたたずんで耳を澄ませました。空に向かって、「ローズ!」と呼んでみました。けれど、ローズはどこからも駆けてきません。
車を出して、外へ出ました。
坂道を降りると、そこは往来の激しい県道です。
道路に出て、ハンドルを切った瞬間…。
脇の田圃道に、横たわる大きな塊を見ました。
喉の奥から、悲鳴をあげました。
それがローズだと思い、またローズでないことを願い、畦に乗り上げるようにして車を入れました。
車を飛び出し、身動きしない身体を持ち上げたとき、首ががくんと垂れました。掌にべっとりと血がつき、地面に滴り落ちました。持ちあげたローズの顔は、目も鼻もつぶれていました。
ローズは、頭を轢かれたのです。
泣きながら車に乗せました。床に、シートに、窓ガラスに、おびただしい血がこぼれました。
今年も、あの日曜日が近づいてきます。
ユキヤナギとレンギョウが花咲き、桜が満開を告げる、美しい季節がやってくると、青空の下、白と黄色と桃色の花の間から、ローズが駆けてくるような気がします。
黄金の毛を風になびかせ、愛くるしい目で私を見つめて、まっすぐに走ってくるような気がします。
はいました。ずいぶん大きくなってケージに入らなくなったのか、粗末な縄にくくられて犬小屋の前にうずくまっていました。
やせこけたゴールデンレトリーバ。ひょろ長い手足と貧相なボディ。
私の顔を見ると、しっぽを振って近づいてきます。ちょっと頭をなでてやると、人恋しかったのでしょうか、鼻先をこすりつけ、身体を摺り寄せてきました。
『いくらなんでも、大きすぎるなー
…』その日は、そのまま帰りました。
翌日、どうにも気になって、もう一度ショップへ行きました。
犬はいません。
店員さんに聞くと、
「ああ、あれね…。どうしようかと思ってたんですよ」
裏口へ導かれました。犬は暗い倉庫の片隅につながれていました。
私を覚えていたのか、跳ね起きて、紐がちぎれそうなほど伸びあがってきます。
「これ、欲しいんだけど…」
思わず口にしてしまいました。
「え、ほんとに…よかったなぁお前、命拾いしたぞ」
(えっ
どういう意味
)ショップでも持て余していたのか、かなり値引いて売ってくれました。
こうして我が家の一員になったゴールデンレトリーバ。名前は「ローズ」
。その頃、プロ野球で首位打者になった選手の名前を取ってつけました。
ローズはすくすくと育っていきました。
ガリガリだったボディに肉がつき、全身に黄金色の毛がフサフサと波打ちました。おとなしくて賢くて優しい犬でした。
庭先で草抜きをしていると、傍らにちょこんと座って見ています。ゴムボールを投げると、駈け出して取ってきます。つぶらな瞳で私を見上げ、小首をかしげておねだりをする、どうしてこんなに愛らしいのか、抱きしめるとあたたかな体温が伝わってきて、涙がこぼれそうになります。
黄金色の毛を波打たせ、庭先を嬉しそうに疾走するローズは、陽光の下にキラキラと輝く、美しい生き物のようです。
「きれいだねローズ。まるで…スーパーモデルみたいだよ」
淋しかった私の、唯一の、ともだち。
春でした。
白いユキヤナギと黄色いレンギョウが今を盛りと咲き誇り、桜が満開を告げる4月。一年中で、いちばん美しい日曜日でした。
草抜きのあと、少しまどろんで、ソファに横になっていた私は、ふと目が覚めて庭を見ました。どこかで犬の吠え声を聞いた気がしました。
ローズが、いない…?
怖がりで、車が嫌いだったローズが、この頃やけに外へ出たがっていた…。
庭へ出て、あたりを見渡しました。空は真っ青で、どこからか桜の花びらが飛んできます。近くの公園はお花見の客でにぎわっていて、歓声が風に乗って飛んできます。すぐ下の県道は、花見行き来の車で、ふだんより混雑していました。
じっとたたずんで耳を澄ませました。空に向かって、「ローズ!」と呼んでみました。けれど、ローズはどこからも駆けてきません。
車を出して、外へ出ました。
坂道を降りると、そこは往来の激しい県道です。
道路に出て、ハンドルを切った瞬間…。
脇の田圃道に、横たわる大きな塊を見ました。
喉の奥から、悲鳴をあげました。
それがローズだと思い、またローズでないことを願い、畦に乗り上げるようにして車を入れました。
車を飛び出し、身動きしない身体を持ち上げたとき、首ががくんと垂れました。掌にべっとりと血がつき、地面に滴り落ちました。持ちあげたローズの顔は、目も鼻もつぶれていました。
ローズは、頭を轢かれたのです。
泣きながら車に乗せました。床に、シートに、窓ガラスに、おびただしい血がこぼれました。
今年も、あの日曜日が近づいてきます。
ユキヤナギとレンギョウが花咲き、桜が満開を告げる、美しい季節がやってくると、青空の下、白と黄色と桃色の花の間から、ローズが駆けてくるような気がします。
黄金の毛を風になびかせ、愛くるしい目で私を見つめて、まっすぐに走ってくるような気がします。
Posted
at 17:58
| 雑記
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。反省です


美人薄命といいますか…(笑)、ゴールデンをペットにしてお散歩している人をよく見かけますが、ローズがいちばんきれいだったなーって、今でも思います(親ばか?)