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中距離パートナーRのこと、趣味の手織り…
日々つれづれを、のんびりゆったり綴ります。
(7/27「座無の創作ノート」休止いたします)

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ローズの日曜日 [2008年03月23日(日) ]
 ペットショップの店先に、はいました。
 ずいぶん大きくなってケージに入らなくなったのか、粗末な縄にくくられて犬小屋の前にうずくまっていました。
 やせこけたゴールデンレトリーバ。ひょろ長い手足と貧相なボディ。
 私の顔を見ると、しっぽを振って近づいてきます。ちょっと頭をなでてやると、人恋しかったのでしょうか、鼻先をこすりつけ、身体を摺り寄せてきました。
『いくらなんでも、大きすぎるなー…』
 その日は、そのまま帰りました。
 
 翌日、どうにも気になって、もう一度ショップへ行きました。
 犬はいません。
 店員さんに聞くと、
「ああ、あれね…。どうしようかと思ってたんですよ」
 裏口へ導かれました。犬は暗い倉庫の片隅につながれていました。
 私を覚えていたのか、跳ね起きて、紐がちぎれそうなほど伸びあがってきます。
「これ、欲しいんだけど…」
 思わず口にしてしまいました。
「え、ほんとに…よかったなぁお前、命拾いしたぞ」
(えっ どういう意味
 ショップでも持て余していたのか、かなり値引いて売ってくれました。

 こうして我が家の一員になったゴールデンレトリーバ。名前は「ローズ」
 その頃、プロ野球で首位打者になった選手の名前を取ってつけました。

 ローズはすくすくと育っていきました。
 ガリガリだったボディに肉がつき、全身に黄金色の毛がフサフサと波打ちました。おとなしくて賢くて優しい犬でした。
 庭先で草抜きをしていると、傍らにちょこんと座って見ています。ゴムボールを投げると、駈け出して取ってきます。つぶらな瞳で私を見上げ、小首をかしげておねだりをする、どうしてこんなに愛らしいのか、抱きしめるとあたたかな体温が伝わってきて、涙がこぼれそうになります。
 黄金色の毛を波打たせ、庭先を嬉しそうに疾走するローズは、陽光の下にキラキラと輝く、美しい生き物のようです。

「きれいだねローズ。まるで…スーパーモデルみたいだよ」

 淋しかった私の、唯一の、ともだち。


 春でした。
 白いユキヤナギと黄色いレンギョウが今を盛りと咲き誇り、桜が満開を告げる4月。一年中で、いちばん美しい日曜日でした。
 草抜きのあと、少しまどろんで、ソファに横になっていた私は、ふと目が覚めて庭を見ました。どこかで犬の吠え声を聞いた気がしました。

 ローズが、いない…?

 怖がりで、車が嫌いだったローズが、この頃やけに外へ出たがっていた…。
 庭へ出て、あたりを見渡しました。空は真っ青で、どこからか桜の花びらが飛んできます。近くの公園はお花見の客でにぎわっていて、歓声が風に乗って飛んできます。すぐ下の県道は、花見行き来の車で、ふだんより混雑していました。
 
 じっとたたずんで耳を澄ませました。空に向かって、「ローズ!」と呼んでみました。けれど、ローズはどこからも駆けてきません。

 車を出して、外へ出ました。
 坂道を降りると、そこは往来の激しい県道です。
 道路に出て、ハンドルを切った瞬間…。

 脇の田圃道に、横たわる大きな塊を見ました。
 喉の奥から、悲鳴をあげました。 
 それがローズだと思い、またローズでないことを願い、畦に乗り上げるようにして車を入れました。
 車を飛び出し、身動きしない身体を持ち上げたとき、首ががくんと垂れました。掌にべっとりと血がつき、地面に滴り落ちました。持ちあげたローズの顔は、目も鼻もつぶれていました。

 ローズは、頭を轢かれたのです。

 泣きながら車に乗せました。床に、シートに、窓ガラスに、おびただしい血がこぼれました。
 

 今年も、あの日曜日が近づいてきます。
 ユキヤナギとレンギョウが花咲き、桜が満開を告げる、美しい季節がやってくると、青空の下、白と黄色と桃色の花の間から、ローズが駆けてくるような気がします。
 黄金の毛を風になびかせ、愛くるしい目で私を見つめて、まっすぐに走ってくるような気がします。



 

Posted at 17:58 | 雑記 | この記事のURL
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