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中距離パートナーRのこと、趣味の手織り…
日々つれづれを、のんびりゆったり綴ります。
(7/27「座無の創作ノート」休止いたします)

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小津の魔法使い(其の5) [2008年08月14日(木) ]



こんばんは。小ざむです。

Rさんの帯状疱疹は、徐々に快方に向かっていく様子。
座無ねえさんも、ひと安心みたいです。
お盆休みには、久しぶりにRさんとデートやそうで、ウキウキしてます。

お土産のフクロウとか手織りのマットとか、藍染めのハンカチとか、見せたいもんがいっぱいあるんですって

えーと。どこまで書きましたっけ。
あ、小津さんが専用ハガキを置いて、去って行ったところまででしたね。




      小津の魔法使い(其の5)



『こんなんで届くのかなあ』
と、鈴木さんは首をかしげました。


     2

「あなたの作品が、今年の朽木賞に選ばれました」
待ちにまったニュースが飛び込んできたのはそれから一ヵ月後のことです。
鈴木さんの作品に鼻もひっかけなかった同人誌の仲間たちも、手のひらを返したように大喜び。
「おめでたい、ありがたい。何はともあれ、ぱあてぃ、ぱあてぃ」
と、大はしゃぎでした。
「鈴木さんはいずれ賞をとる人だと思うとった」
「次は中央文壇をめざせ」

手袋工場のおばさんたちだって、もう鈴木さんの悪口は言いません。「すごいな、すごいな」と手をたたいて誉めてくれるし、あの意地悪な工場長までが、「わが社の誇り」と、鈴木さんの載った新聞記事をコピーして食堂の壁に貼りつけたくらいです。
「鈴木くん、執筆活動に専念するから辞めるなんて言わんやろうね。今、うちは人手不足やからね」
と、今までと正反対のことを言います。

鈴木さんはいちやく「時の人」。喫茶店でお茶を飲んでいても視線を感じますし、スーパーで買物をしていても「あらあ」と、見知らぬおばちゃんから声を掛けられます。知らない人から電話をもらって、「あなたはわが町期待の星」とひとしきり激励されたことも。
町の有線テレビにも出たし、広報の表紙にもなりました。
地方の小さな文学賞である「朽木賞」をもらっただけでこんなに大騒ぎしてくれるのです。やっぱり賞はいいな、と鈴木さんは大満足でした。

しかし、喜んでばかりもいられません。
受賞第一作を書かなくてはなりません。朽木賞をもらったあと、泣かず飛ばずになってしまった作家はたくさんいます。いつまでも万歳三唱している場合ではない、これからはたった一人の孤独な戦いがはじまるのだ、と鈴木さんは決意も新たにパソコンに向かうのでした。

執筆は絶好調でした。
今まで書きためておいた小説を手直ししようとすると、あふれるように言葉が出てきてすいすい書けてしまいます。ちょっとストーリーに行き詰まっても、次の日になるとまたひらめきます。一日に何十枚も書き進むことだってあります。

『これが魔法の力かな』
ひとつの作品を書き上げた鈴木さんは試しに出版社へ送ってみました。
今日び、出版社への持ち込み原稿が認められるなんてまずありません。全国に星の数ほどある同人誌から取り上げられることも皆無です。
「作家への近道は中央の文学賞を取ること。それ以外の道はなし」
と言われているくらいですが、それでもあえて送ってみました。魔法の力が働くなら、きっと何かが起こるはずだと。

一週間後、分厚い封書が届きました。
『あなたの原稿を拝読いたしました結果、当社で企画出版させていただきたく…』
企画出版、というのは、費用を出版社が持って本を出してくれるということです。表紙絵もコシマキも作ってくれるし、新聞広告で宣伝もしてくれる。つまり自腹を切らなくていいということ!

鈴木さんは何度も何度も「企画出版」の文字を読み返しました。そして、部屋中を踊りまわりました。
念願の本が出せます。売れれば印税が入ってきます。魔法使いの言うとおりです。

やがて鈴木さんの処女作は本屋の店頭に並びました。新聞もテレビも大々的に宣伝しました。「二十一世紀に残したい文学作品」だの「あのやさしい時代を忘れない」だの、食指をそそるようなコピーをつけて宣伝するものですから、本は飛ぶように売れました。
夢でしかないと思っていた、本屋さんでの出版記念サイン会も盛況でした。自分の本にサインをし、買ってくれた人と握手するなんて、作家冥利につきます。鈴木さんは幸せでした。

同人誌で見向きもされなかった作品が見なおされるようにもなりました。
「鈴木さん、こんなすばらしい作品を書いていたんですか」
編集者がほめてくれました。
「同人誌に発表した作品の版権ね、うちにもらえませんか?」
もちろん鈴木さんに異論はありません。
あれよあれよというまに、また本が出版され、それがベストセラーになり、鈴木さんは「平成の漱石」「日本のディケンズ」と言われるほどになったのです。
連日のように舞い込むパーティーや講演会の案内状、テレビの対談番組、何とかモニター、何とか委員会、身体が幾つあっても足りません。
未知の人間から、
「名前だけ貸してください。お顔だけでも出してください」
と、選挙の事務所びらきから応援演説まで頼まれる有様です。

女の人と出会う機会もふえました。アナウンサー、書道の先生、女流作家、ピアニスト、いずれ劣らぬ「容姿端麗」です。飲み屋へ行ってもゴルフへ行ってもモテモテで、こちらのほうも身体が幾つあっても足りません。
でも、忙しいのは平気です。女の人にやさしくしてもらったり、「先生、先生」とかしずかれるのは悪い気分ではありませんでした。
我が世の春…!

有頂天になって飛び回る鈴木さんのもとへ、ある日ひょっこりと魔法使いが現われました。


(つづく)






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