
こんばんは。小ざむです。
お彼岸を過ぎたら、朝晩が涼しくなりましたね。
座無ねえさんの温泉旅行は、前の晩から、タイヘンやったんです。
お弁当材料を買うてきてね、「明日は全部あたしがやるから、台所に入っていたらダメ!」言うて。
あたしが、「ご飯、しかけときましょうか? 新米やから、水かげんにいコツがあるんですよ」って、一緒にやったら、「少ないんじゃないの? これで絶対大丈夫だろうね? こちこちご飯にならんやろうね??」なんて、うるさいこと

いつもはお寝ぼうの座無ねえさんが、あさ5時半に起きてきて、一生懸命作ってました。
とにかく、楽しんできたようで、よかったです。
さて、どこまで書きましたっけ? そうそう、女の人にお金を出して、結婚を申し込んだところまででしたね。
小津の魔法使い(其の9)
人相の悪い男が訪ねてきたのはその数日後のことでした。
「ちょっとお尋ねしたいことがありましてね」
鈴木さんはおっかなびっくりドアを開けました。サラ金の取り立て屋かしら。でもおかしいな、つい昨日、女の人の部屋の前でスピーカーを持って「金返せ」と騒いでいた取り立て屋に、五百万円たたきつけてやったところです。
お金と引き替えに借用書を置いていきましたし、二度と来ないと約束もしました。
いったい何の用で来たのでしょう。
「私、こういうもんです」
男は胸ポケットから黒い手帳を取り出しました。警察手帳です。
「この女、知ってますか?」
刑事さんが見せてくれた写真は、あの女の人でした。
「この人がどうかしましたか?」
「前科三犯、全国指名手配の結婚詐欺師です」
「え…」
「弟が借金した言うたでしょ? それで取り立て屋に金渡したでしょ? 毎度おんなじパターンですわ」
「……」
「取り立て屋は、女のコレでしてね」
と、刑事さんは親指をたてました。
「あんたの他にあと二人、同じ手口でやられてます。同時に三人の男を手玉にとったんですなあ、感心しますわ。ま、だまされるほうもどうかと思うけど」
三人からそれぞれ五百万ずつせしめてトンズラしたと言うのです。
まさか…。だって昨日、女の人に会ったばかりです。鈴木さんはあわてて女の人に電話をかけました。
『この電話は現在使われておりません』という自動音声が受話器から聞こえました。
でも信じられません。鈴木さんは無理やり刑事さんに頼んで、女の人のアパートに連れていってもらいました。パトカーの中でいろいろなことを聞かれましたが、うわのそらです。冷汗が止まりません。
そしてアパートに着くと…。
誰もいませんでした。部屋のドアにかかっていた名札も、台所の格子窓に並べてあったハーブの鉢植えも、靴箱の上に掛けてあった外国の庭園の絵もありません。何もかもなくなって、がらんとした畳間が広がっているだけでした。
「被害届、出しますか?」
と、聞かれ、
「出します! 逮捕してください、金を取り戻してください!」
刑事さんの胸をつかんで鈴木さんは叫びました。
「逮捕しますよ。それが我々の仕事ですからね。しかし、金が戻るかどうかは保証できまへん。それは民事のほうで」
と、刑事さんの口調は冷静です。
「あんた、作家の先生でしょ? これをネタにハードボイルドでも書いたらどうです」
そう言って、口をゆがめて笑いました。
(つづく)
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at 18:46
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